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2019.02.27

「ありそうでなかった」を形にする

デザイナー
佐藤 オオキ

デザイナー。1977年カナダ生まれ。2002年、早稲田大学大学院理工学研究科建築学専攻修了後、nendo東京オフィスを設立。2005年、nendoミラノオフィス設立。 Newsweek誌の「世界が尊敬する日本人100人」、「世界が注目する日本の中小企業100社」に相次いで選出される。代表的な作品は、ニューヨーク近代美術館(米)など世界中の美術館に収蔵されている。これまで出演したテレビ番組は、「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)、「アナザースカイ」(日本テレビ系)など。主な著書に「佐藤オオキのスピード仕事術」(幻冬舎)、「佐藤オオキのボツ本」(日経BP)、「コップってなんだっけ?」(ダイヤモンド社)などがある。

http://www.nendo.jp/

オリエンテーション

ありそうでなかった、新たなスタンダードになるような床を造ってほしい。床材のデザインについてこのようにオファーをいただいた時、驚きと同時にこみ上げてきたのは「まだ誰も見たことのない新しいプロダクトを生み出せるかもしれない」というワクワク感でした。

 

工場見学の様子
デザインをする際は入念にオリエンテーションを行なう

アイデア出し

通常フローリングは、板同士の継ぎ目を目立たなくするために縦方向と横方向にV字型の目地加工をします。縦方向用、横方向用とそれぞれの目地によって機械も異なり、また、通常幅が狭い木材は使いづらく、廃材になってしまいます。それに気づいたときに、あえて縦方向のみにするのはどうか、そして廃材とされてしまう狭い幅の木材も床として使用してみたらどうだろう、と考えたのです。

「ありそうでなかった」を形にする

縦方向のみにすることで工程を省き、廃棄を減らすという効率化も生まれました。効率のいい幅をシミュレーションし三種類の幅をつくり、場所によってそれを使い分けたり、ミックスしたりできるように、というイメージで考えました。

縦方向の目地のみを使うことで、空間にリズムを生み出し、そのリズム感をコントロールできるようなものになるのでは、と感じたのです。床はこれまでフラットで、ニュートラルなものがメインでしたが、あえて流れを強調して幅を狭くすることで「スピード感」が感じられるようになりました。

「ありそうでなかった」を形にする
プロジェクト始動
『Live Natural stream®』一×六尺の制約の中でつくることが条件となった。

ただ空間を方向づけるだけではありません。これは、空間に「速度」を与えるデザインです。例えば廊下などの人が頻繁に移動するような場所には流れを早くしたり、窓に面した広い空間にはゆっくりと外に意識が向かうようにしたりできる、「速度」を感じさせる床。ありそうでなかったスタンダードを見つけることができたのです。

建材のデザイン

「ありそうでなかった」を形にする
はじめて床のデザインに挑戦し、建材と家具の面白い関係性や、建材がもつ大きな可能性を見出したプロジェクトとなった

椅子やテーブルといった家具は、従来からデザインの対象として見られてきました。そして、これからはデザインの領域が広がり、建材もデザイナーの新しい視点によってデザインされる時代になりつつあるように思います。
例えば今回の『stream』のように空間に流れをつくり、速度感を変化させるというのは、実は非常に重要なことではないでしょうか。デザインによって、空間のつくられ方、インテリアや建築の考え方が変化するというのが、今、大きな流れとしてあるような気がしています。
これまで建材は住宅会社や設計士など専門家が選ぶ時代でしたが、少しずつエンドユーザーが、直接建材を選んでオーダーするというケースが増えてきています。今後、『この椅子がいい、このソファーがいい』というのと同じ感覚で建材を選ぶ時代になっていくのではないでしょうか。

一方で家具は今、建材のようなパーツ的な要素が求められてきています。非常に面白い流れですよね。エンドユーザーがどんどんクリエイティブになってきた今、デザインは押しつけるものではなく、可能性を提示するものに変化しています。まだまだアイデアはたくさんあるので、床材や壁材などの建材はこれから楽しみなジャンルです。